会社更生について

会社更生について

会社更生法は、大規模または社会的存在意義のある株式会社について、債権者、株主、従業員等の関係人の利害を調整しつつ、事業の継続を行い、会社の債権を図る手続です。
再建型の倒産処理手続きとして、民事再生手続きの特別手続に当たります。手続きが厳格で、相当の時間・コストがかかるので、大規模な株式会社に対する適用が前提となります。
更生管財人が事業の経営を行い、関係人多数の同意と裁判所の認可を受けた更生計画を遂行します。

担保権者、租税債権者をも手続に取り込んだ強力な手続きであり、他の再建型、清算型の手続に優先します。なお、平成14年12月の新会社更生法では、既存の取締役等の管財人選任が明文で認められるとともに、担保権消滅請求制度の新設、更生担保権の評価基準の継続企業価値から時価への変更、更生計画案の可決要件が緩和、更生計画期間を20年から15年に短縮、などの改正が行われました。

民事再生手続と比較した特徴

第1に、DIP型を原則とする民事再生手続きに比べ、必ず管財人が選任されることで手続きの透明性が確保されます。

第2に、再生手続と異なり、更生手続きでは担保権者も更生担保権者として手続に組み込み、その権利実行を禁止し、権利内容を更生計画で変更できることです。

第3に、租税債権の優位性が減殺されています。 第3に、計画内容が限定され、組織変更には原則として会社法上の手続きを必要とされる再生手続きと比べ、更生手続きでは、更生計画の内容として、会社分割・合併・株式交換・株式移転など多様なものが認められ、様々な会社法上の特則も設けられています。

第4に、再生計画認可またはその3年後までの手続きの継続に限定される再生計画に比べ、更生計画では、更生計画の遂行が確実と認められるまで手続きが続き、計画の履行がより確実になっています。

更生手続きに特に適合的なのは以下のような事案です。

第1に、事業の中核的な資産に担保権が設定され、担保権者との間で再建の合意が容易に調達できないような事案です。再生手続きの担保権消滅請求では、目的物価格を一括で支払わなければなりませんが、更生手続きでは、更生担保権の分割払いが可能となります。

第2に、再建のための組織の再編やM&Aが不可欠な事案であり、更生計画の中でそれらの手続きができるため、いちいち、株主総会決議などの会社法上の手続きが不要となります。

手続きの流れ

① 手続開始申立て、開始決定、債権の届出・調査・確定、計画案作成・その決議という手続の手順自体は、民事再生法と同様です。

② 更生手続開始申立てと同時に、債務者の財産の保全(手形不渡りの回避も)のために、保全処分の申立てがなされます。また、裁判所によって保全管理人(弁護士)が選任されます(保全管理命令)。旧経営者の経営権(業務遂行権及び財産管理処分権)はなくなります。

③ 更生手続開始決定の要件は、民事再生手続と同様ですが、その吟味について、民事再生手続に比し、より厳格で、かつ決定までの期間も1か月程度を要します。

④ 開始決定後は、保全管理人が更生管財人として法的処理とともに、事業の運営を行います。必要により、事業家の管財人(事業管財人)が選任され、この場合、弁護士の管財人は法律家管財人(法律管財人)といいます。改正会社更生法により、会社に対して損害賠償の責任のない旧経営者は、管財人となりうることとなりました。

⑤ 会社更生手続きでは、民事再生手続と異なり、担保権の実行が禁止されています。更生担保権(担保権の被担保債権)は弁済禁止となり、更生計画に基づいて支払われます。なお、更生担保権は、民事再生法、破産法における別除権の範囲と同様です。
改正会社更生法により、更生担保権の評価の基準は時価とされました。これは従来、「会社の事業が継続するものとして評定した価格」とされていましたが、この算定が困難で、多くの紛争を生み、手続きの円滑な進行を妨げていたことに鑑み、より客観的な基準として採られました。しかし、「時価」であってもやはり算定は難しいところがあるため、裁判所による担保目的物の価格決定の制度等が設けられました。

⑥ 更生計画案の関係人集会での可決の要件は、
(イ)更生債権については、総議決債権額の2分の1超、
(ロ)更生担保権については、
a.期限猶予を定める更生計画案は総議決債権額の3分の2以上(実際には、このケースが多いです)、
b.減免等を定める更生計画案は4分の3以上、
c.事業の廃止を定める更生計画案は10分の9以上、の各議決権者の同意があることです。
(ハ)株式については、株主の議決権数の過半数の同意が必要とされておりますが、債務超過のときは株主に議決権はありません。

⑦ 更生手続の終結については、更生計画の遂行またはそれが確実と認められるまで手続きが続きます。更生計画認可決定後も、従来の法律家管財人が、法律顧問として、更生計画の履行の円滑化に寄与するという運用がなされています。この点で、民事再生手続よりも、履行が確実となっているといえます。

手続きの長短

① 長所   
(イ)更生会社の経営権が管財人に移り、管財人を通じて裁判所の監督権が及びます。これにより、手続の透明性が確保されます。  
(ロ)担保権者も民事再生法を含む他の倒産法とは異なってその評価に基づいて更生手続に服させられるので、事業再建に不可欠な物件の使用が保護され得ます。
さらに租税債権は他の倒産法では優先されていましたが、その優位性が減殺されています。
(ハ)債権の届出・調査・確定、否認権の行使、取締役等に対する損害賠償責任追及の簡易手続などの手続・手段があります。債権者からの届出のない債権は失権します。  
(ニ)会社法の特則として、合併、分割、増減資、定款の変更、取締役の変更等を更生計画で定めることができるので、組織の再編(組み換え等)などに利点があります。これに対し、民事再生手続では、組織再編には原則として会社法の手続きを必要とします。

② 短所  
(イ)手続きが複雑で時間と費用が掛かります。したがって、中小企業の再建手続としては採り難いと言われてきました。  
(ロ)旧経営者の経営権がなくなり、また、場合により責任を問われることから、申立てが躊躇されます。   
上記(イ)(ロ)の短所を改めるべく、平成21年からDIP型、すなわち保全管理人は選任されず、会社の代表取締役が事業家管財人、会社更生申立代理人が法律アドバイザーまたは法律家管財人となり、別に調査委員が加わり、時間の短縮化も図られた会社更生手続が導入されています。 標準スケジュールの存在確認。

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